2012年10月23日

当たり前の


振り切れぬ願いの後日談。
甘いだけですたぶん。激しくタナッセの性格が迷子。



「全く、そんなところに隠れてないで出てこい」
「やだ」
「お前は子供か」

駄々を捏ねる彼女は可愛らしい。
……我ながら、レハトを盲愛し過ぎていると自覚はしている。

自覚したところでどうにかなる訳ではないのだが。

「困ったお姫様だなお前は」

レハトが駄々を捏ねて中々出てこない理由は分かっている。
ふっと息をつき、ソファーから徐に立ち上がる。

さてさて、駄々っ子お姫様を迎えに行かねば。

「ほら、いつまでいるつもりだ。そこで夜を明かす気か?」
「……違うもん」

出てこない理由なんて分かっているさ。
思わずくつくつと喉から笑いが漏れてしまった。

「本当に子供だなお前は」

彼女の膝の下と背中に腕を回す。
そのままひょいと体を持ち上げる。相変わらずレハトは軽い。

これは以前にも彼女にしたことがある。
そして、最近やたらにレハトがして欲しいと頼んでくることだ。


いわゆる、お姫様抱っこを。

「ご期待には添えたかな?お姫様」
「……私のことバカにしてるでしょ」
「いえいえ、大真面目でございますよ。お姫様」

茶番が可笑しくて思わず笑みが零れる。
レハトが満更でもない顔をするのが嬉しい。

抱き上げたままソファーまで彼女を連れて行く。

「そもそもお前が頼んできたんだろうに」
「…………頼んでないもん」
「おやおや、それは失礼致しました」

要望通りに下ろしてやると、少し残念そうな顔をされた。
抱っこして欲しいなら素直にそう言えばよいのに、変な所で頑固な奴だ。

「……タナッセ変な顔してる」
「変な顔?」

おっと。私は今どんな顔をしているのだろうか。
手鏡は持ち合わせていない。どうせ締まりのない顔なのだろうな、とは思う。

「駄々っ子が一人いれば苦労で顔も変になるさ」
「やっぱりバカにしてるでしょ」
「どうだろうな?」

頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
何だかごにょごにょと言ってるがこの際無視だ。

「子ども扱いしてる」
「お気に召さないか。私から見たらお前はまだ子供だけどな」
「絶対バカにしてる」

これ以上からかうと後の報復が恐ろしいのでやめてやろう。


「冗談だ。お前が子供じゃない事くらいちゃんと分かってるさ」

そういってレハトを引き寄せると、何の抵抗もなく腕に収まってしまった。珍しい。
その様子が可笑しくて可愛くてどうしようもないくらいに愛しい。

額にかかっていた髪を上げ、そこに軽く口付ける。
くすぐったいと言ってレハトが身じろぎした。

その様子ですらとても可愛いと思ってしまう。
どちらかと言えば、バカは私の方だろう。……いや、どちらではなく私がバカなのか。

「タナッセってさ」
「なんだ」
「……そんな人だったっけ」

何のことだろうか。聞き返すと思いもよらぬ言葉が返ってきた。

「だから、そんなに抱きしめたり、口付けしたりする人だっけ」
「違ったのなら大方お前のせいだ」
「……もう知らない」

そう言ってレハトが噛み付くように口付けてくる。


ああ、何度でも言ってやろう。



私は世界で一番幸せ者だ。お前を愛している、と。
posted by ロベリ at 22:06| かもかて小話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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